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一宮簡易裁判所 昭和45年(ハ)21号 判決

原告 梶浦新一郎

被告 国

訴訟代理人 鈴木茂 外三名

主文

別紙目録〈省略〉記載の土地につき、原告が所有権を有することを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実および理由

一、請求の趣旨は主文と同旨

二、請求原因の要旨は次のとおりであつて、1、6の各事実および9のうち本件土地は表示登記がなされているのみで、所有権欄に山田清助の記載がある事実は争いがなく、3の事実はこれを認めるに足る証拠がないが、2、4、5および7の各事実は証拠によつてこれを認めることができる。よつて請求は理由がある。

1  別紙目録記載の土地(以下本件土地という)はもと訴外山田清助の所有であつた。

2  右山田清助の身内訴外山田鉄治郎は本件土地を明治三六年旧二月一〇日訴外原告の先々代梶浦善吉に売却した。

右梶浦善吉は明治三八年三月二四日隠居し同人の二男訴外梶浦善七が家督相続人となつた。

梶尾善吉の三男であり原告の先代でもある訴外梶浦善兵衛は明治三九年六月二一日前本籍地たる中島郡平和村(現平和町)六輪字郷三五番地から同字三一番地に分家した。

3  右分家のころ、右善兵衛は右善七からその生活の資として本件土地の贈与を受けた。その後右善兵衛は右土地を一〇年間所有の意思をもつて使用し占有をなしたのだから同人は大正五年六月二一日の経過により右土地の所有権を時効取得した。よつて原告は本訴において右時効を援用する。

4  仮に右3記載の事実が認められないとしても、右善七が昭和二年六月一四日名古屋市南区豊田町字ヨノ割一二一五番地に転籍したころ、本件土地の所在地に居住の右善兵衛は、昭和四三年一月二〇日同人死亡の日まで所有の意思をもつて平穏且公然に右土地を使用し占有をしており、同土地にかかる税金も同人もしくは原告が納入してきたものである。かくて右善兵衛は昭和二二年六月一四日ごろの経過により本件土地の所有権を時効取得した。よつて原告は本訴において右時効を援用する。

5  右善兵衛の相続人としては、原告の外に二男善助の代襲相続人正善、同美喜夫、同ひろみ又長女としてあきがおり、右善兵衛の遺産たる本件土地の分割について右相続人らが協議した結果、右土地は原告の単独所有と定めた。

6  これより先右1記載の山田清助は明治二五年一二月一一日死亡し、同家は単身戸主であつた山田清助の死亡后満六ケ月以内に跡相続者を届出ないため、明治二六年六月一一日の経過により絶家となり、山田清助の戸籍は大正七年八月七日付名古屋区裁判所の許可により同月九日抹消された。

7  同家の絶家後五年を経過した後において、右山田清助の親族間において、本件土地につき協議がなされることなく、又官没もされることなく、経過したものであるから、右土地は明治三一年六月一一日ごろの経過により無主の不動産となり、旧民法施行の明治三一年七月一六日当時無主の不動産であつたものであるから、旧民法施行と同時に同法第二三九条二項の規定により国庫の所有に帰したものである。

8  右のように国庫に帰属した本件土地を原告は前記のような経過によつてその所有権を取得したものである。

9  本件土地は表示登記がなされているのみで、未登記であるが、その所有権欄に山田清助の記載があるので、右土地の所有権を確認の上原告において所有権保存登記をする必要がある。

10  よつて、原告は本件土地の所有権の確認を求めるため、本訴請求に及んだ。

(裁判官 松原照一)

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